ロボット掃除機、結局どれがいい?7点を「吸引力の数字が何なのか」で比較

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こんな場面で、選び方に迷っていませんか

ロボット掃除機を探すと「10,000Pa」「25,000Pa」「36,000Pa」という数字が並びます。数字が大きいほど強いのだろう、と考えます。

ところが同じ売り場に、Paをまったく書いていない製品が混ざっています。さらにルンバは「4倍にアップした吸引力」という別の書き方をしています。

比べようがありません。調べたところ、理由がありました。

ロボット掃除機は、家庭用品品質表示法の対象外です。 法律が定めた指標の表示義務がない場所に、各社がそれぞれの数字を置いています。

ロボット掃除機には、吸引力の表示義務がありません

消費者庁の「電気掃除機」の品質表示の手引きを確認しました。対象の定義と、対象外になるものがはっきり書かれています。

定義 真空式(モーターにより真空状態をつくりゴミを吸入し集める方式)で、電源として電池を使用しないものとする。

対象外となるもの 業務用/特殊用途のもの/電源に電池(充電池を含む)を使用するもの/セントラルクリーナー/ブラシを回転させて床を磨くもの/モーター部分が据置・設置形のもの

「電源に電池(充電池を含む)を使用するもの」が対象外です。 ロボット掃除機は充電池で動きます。コードレススティック掃除機も同じです。

対象になる掃除機(コンセントにつなぐキャニスター型など)には、次の表示義務があります。

項目 内容
吸込仕事率 JIS C9108(電気掃除機)に規定する吸込仕事率をワット単位で表示(許容範囲は表示値の−10%以内)
質量 本体と付属品の合計をキログラム単位(許容範囲は表示値の±10%以内)
使用上の注意 使用方法/点検・手入れに関する注意事項
表示者名 氏名または名称を付記し、責任の所在を明確にする

つまり日本には「吸込仕事率(W)」という法定の指標があり、測り方はJISで決まっていて、表示値の誤差範囲まで定められています。 ただしそれはコード式の掃除機の話です。

ロボット掃除機は、この枠の外にあります。

どの掃除機に表示義務があって、どれにないのか

規程の定義と除外規定を、掃除機の種類にあてはめると次のようになります。

掃除機の種類 吸込仕事率(W)の表示義務 理由
キャニスター型(コンセントにつなぐ) あり 真空式で、電源に電池を使わない
紙パック式・サイクロン式の床置き型 あり 同上
コードレススティック掃除機 なし 電源に充電池を使用するため対象外
ロボット掃除機 なし 同上
ハンディクリーナー(充電式) なし 同上
業務用 なし 業務用は対象外
フロアポリッシャー(床を磨くもの) なし ブラシを回転させて床を磨くものは対象外

ここ10年で主流になった掃除機は、ほとんどが表示義務の外側にあります。 コードレス化が進んだ結果、法定指標で比べられる製品のほうが少なくなりました。

吸込仕事率が表示されている製品は、その数字をメーカーをまたいで比べられます。JIS C9108で測り方が決まっていて、表示値の誤差も−10%以内と定められているからです。ロボット掃除機にはこの土台がありません。

「Pa」と「W」は、そもそも違うものを測っています

Pa(パスカル)は圧力の単位です。 どれだけ強く引く力が生まれているかを表します。

W(ワット)は仕事率の単位です。 吸込仕事率は、風量と真空度をかけ合わせた値で、空気を動かす能力を表します。

同じものの別の言い方ではありません。 強く引けても空気が流れなければゴミは動きませんし、風量があっても圧力が足りなければ絨毯の奥から吸い上げられません。Paの数字が大きいことは、吸込仕事率が大きいことを意味しません。

そしてロボット掃除機のPaをどう測るかを定めた公的な規格は、今回の調査では確認できませんでした。 確認できたのは、法定指標である吸込仕事率(W)の測定方法がJIS C9108にあること、そしてロボット掃除機はその表示義務の対象外であること、の2点です。

測り方が共通でない数字を、メーカーをまたいで比べることはできません。 10,000Paと12,000Paの差が何を意味するのか、判断する手がかりがありません。

実際の表示は、3つのパターンに分かれています

売り場で確認したところ、吸引力の示し方は3通りありました。

パターン1:絶対値をPaで書く。 ECOVACS、roborock、SwitchBot、ILIFE、dreame など。商品名に「10,000Pa」「36,000Pa」のように入れています。

パターン2:何も書かない。 Anker Eufy は商品名に吸引力の数字を入れていません。roborock も Q10V+ のような一部モデルでは入れていません。

パターン3:倍率で書く。 アイロボット(ルンバ)です。公式サイトにはPaもワットも出てきません。代わりにこう書かれています。

従来比3倍*2の強力な吸引力
*2: Roomba® 105 Combo ロボットとの比較

4倍にアップした吸引力*1
*1: Roomba® 105 Combo ロボットとの比較。

「3倍」も「4倍」も、比較対象は同じ Roomba® 105 Combo です。 これは同社の最も安いモデル(39,800円)です。他社比でも業界平均比でもありません。

そして基準となる105 Combo自身の吸引力は、絶対値では公表されていません。 基準の数字が分からないので、「4倍」が他社の何Paに相当するのかは、計算できません。

注釈のつけ方自体は丁寧です。何と比べた倍率なのかを明記しているので、読めば分かります。ただし読まないと、「4倍」が業界比だと誤解する余地があります。

Paの数字を、価格と並べてみる

売り場で見かけたPa表記を、価格と一緒に並べます。

Pa表記 製品 価格
2,800Pa UBROBO ロボット掃除機 薄型 14,990円
3,500Pa VersLife L6 19,999円
10,000Pa ILIFE A30 Pro 28,980円
10,000Pa ECOVACS DEEBOT mini2 69,800円
10,000Pa ECOVACS N30 PLUS 69,800円
12,000Pa SwitchBot K11+ Pro 59,800円
25,000Pa ECOVACS DEEBOT T50S OMNI 109,800円
25,000Pa dreame L10s Ultra Gen3 123,800円
30,000Pa ECOVACS DEEBOT T90 PRO OMNI 159,800円
36,000Pa roborock Saros20 249,800円

最小の2,800Paと最大の36,000Paで、12.9倍の開きがあります。

この表から読み取れることと、読み取れないことを分けます。

読み取れること。 同じブランドの中では、価格が上がるとPaの数字も上がります。ECOVACSは10,000Pa(69,800円)→25,000Pa(109,800円)→30,000Pa(159,800円)と連動しています。同じ会社が同じ方法で測っているなら、この上下関係は意味があります。

読み取れないこと。 10,000PaのILIFE(28,980円)と10,000PaのECOVACS mini2(69,800円)が、同じ条件で測った同じ性能なのかは分かりません。測定方法を定めた共通の規格が確認できないからです。価格が2.4倍違うのに同じ数字、という事実は、むしろ数字の比較可能性を疑う材料になります。

25,000Paが2社に出てきます。 ECOVACS T50S OMNI(109,800円)と dreame L10s Ultra Gen3(123,800円)。偶然一致したのか、同じ測り方をしているのかは、外からは判断できません。

7点の比較

製品 価格 吸引力の表示 表示の型
ILIFE A30 Pro 28,980円 10,000Pa 絶対値
Anker Eufy Robot Vacuum Auto-Empty C10 29,990円 商品名に表記なし 非表示
roborock Q10V+ 43,999円 商品名に表記なし 非表示
SwitchBot K11+ Pro 59,800円 12,000Pa 絶対値
ECOVACS DEEBOT mini2 69,800円 10,000Pa 絶対値
ルンバ Roomba® Max 199,800円 4倍(105 Comboとの比較) 倍率
roborock Saros20 249,800円 36,000Pa 絶対値

価格は確認時点のものです。

同じ価格帯で、表示の型が違います。 28,980円のILIFE A30 Proは10,000Pa、29,990円のAnker Eufy C10は数字なし。数字がないほうが性能が低い、とは限りません。 書く義務がないので、書かない選択ができるだけです。

そして10,000Paは、価格帯を問わず現れます。 28,980円のILIFEも、69,800円のECOVACS mini2も10,000Paです。2.4倍の価格差が、この数字には現れていません。

価格差は吸引力以外のところにあります。 自動ゴミ収集の有無と容量、水拭きの方式(モップを回すのか、こすりつけるのか、自動洗浄するのか)、マッピングの精度、障害物回避、本体の高さ、静音性。Paの数字は、このうちどれも表していません。

製品別に見る

ILIFE A30 Pro

28,980円、10,000Pa表記。自動ゴミ収集、最大60日間ゴミ捨て不要、水拭き両用、自動充電。今回の7点で、10,000Pa表記の製品としては最も安い価格帯です。 同じ10,000Pa表記のECOVACS mini2とは40,820円の差があります。測定方法が共通でない以上、この2つの「10,000Pa」が同じ条件で測られた保証はありません。

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Anker Eufy Robot Vacuum Auto-Empty C10

29,990円。商品名に吸引力の数字が入っていません。 Anker Eufy は上位の Omni C28(87,600円)、旧モデルの RoboVac G30 Hybrid(39,990円)でも商品名にPaを入れていませんでした。表示義務がない以上、これは違反ではありません。 Paで比べたい人にとっては比較の土俵に乗らない、というだけです。

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roborock Q10V+

43,999円。水拭き両用、自動ゴミ収集、障害物回避。同じroborockでも、こちらは商品名にPaがありません。 一方で上位のSaros20には36,000Paと入っています。同一ブランド内でも表示の方針が揃っていないことになります。

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SwitchBot K11+ Pro

59,800円、12,000Pa表記。超小型、水拭き、高精度マッピング、使い捨て掃除シート30枚付属。禁止エリア設定、静音設計、自動充電、落下防止。本体が小さいモデルで、家具の間に入れるかどうかが選ぶ理由になります。 この点は吸引力の数字には現れません。

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ECOVACS DEEBOT mini2

69,800円、10,000Pa表記。超小型モデルで、水拭き両用、電動デュアルモップ。ECOVACSは同じシリーズ内で表記を使い分けています。 T50S OMNI は25,000Pa(109,800円)、T90 PRO OMNI は30,000Pa(159,800円)、N30 PLUS は10,000Pa(69,800円)。価格とPaはおおむね連動していますが、mini2とN30 PLUSは同じ10,000Paで同じ69,800円です。

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ルンバ(アイロボット)

公式オンラインストアの価格は、Roomba® 105 Combo が39,800円、Roomba® が49,800円、オンライン限定モデルが59,200円、Roomba® Plus が129,800円、Roomba® Max が199,800円と99,800円。

吸引力はPaでもワットでもなく、倍率で示されます。 Roomba® Plus が「従来比3倍」、Roomba® Max が「4倍にアップした吸引力」。いずれも注釈で「Roomba® 105 Combo ロボットとの比較」と明記されています。

他社のPa表記と並べて比較することはできません。 基準となる105 Comboの絶対値が公表されていないためです。ルンバ同士であれば、3倍と4倍の関係は比べられます。

なお「46%小型化したデザイン」という表記もあり、こちらの注釈は「Roomba® Plus 505 Combo ロボットと体積での比較」です。何と、何で比べた数字なのかが注釈に書かれています。

roborock Saros20

249,800円、36,000Pa表記。今回調べた中で最も大きいPaの数字です。超薄型、水拭き両用、自動ゴミ収集、8way全自動ドック。

2,800Paの製品(14,990円)と比べると、数字の上では12.9倍です。 ただし測定方法が共通でない以上、この12.9倍が実際の清掃性能の差を表しているとは言えません。同一ブランド内であれば、同じ方法で測っている可能性は高いと考えられます。

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数字で比べられないなら、何で選ぶか

Paが比較に使えないとすると、残るのは自分の家の条件に当てはまるかどうかです。

本体の高さ。 ソファやベッドの下に入るかどうかは実測で決まります。家具の下のクリアランスを測って、本体高さと比べてください。これは数字で確実に比較できる項目です。

段差の乗り越え高さ。 部屋の間の敷居、カーペットの縁。製品ページに「◯mmまで」と書かれています。家の敷居を測ってから見てください。

自動ゴミ収集の有無と、紙パックの費用。 本体価格に現れない継続費用です。紙パックの型番と価格、何日もつかを確認してください。

水拭きの方式。 モップを引きずるだけのもの、回転させるもの、自動で洗浄・乾燥するものがあります。「水拭き対応」という言葉は、この3つを区別しません。

ゴミ捨ての頻度。 「最大60日間ゴミ捨て不要」のような表記は、部屋の広さやペットの有無で変わります。保証された期間ではありません。

運転音。 集合住宅や、在宅勤務中に動かすなら効いてきます。dB表記があれば比べられます。

買う前に、最初にやること

Paの数字をメーカーをまたいで比べない。 ロボット掃除機は家庭用品品質表示法の対象外で、法定の指標(吸込仕事率W)の表示義務がありません。Paの測定方法を定めた公的規格も確認できませんでした。同じブランド内での上下関係を見るぶんには使えます。

「◯倍」を見たら、何と比べた倍率か注釈を読む。 ルンバの「4倍」は自社の最安モデルとの比較です。注釈に明記されていますが、本文だけ読むと業界比に見えます。

Paが書いていないことを、性能が低い証拠だと考えない。 書く義務がないので、書かない選択ができます。Anker Eufy は全モデルで商品名に入れていませんでした。

家具の下に入るかを実測する。 本体高さと、ソファ・ベッド下のクリアランスを測って比べてください。買ってから分かると、置き場所ごと見直すことになります。

敷居やカーペットの段差を測る。 乗り越え高さは製品ページに数値があります。家の段差より小さければ、その部屋には入れません。

継続費用を先に調べる。 紙パック、モップパッド、フィルター、ブラシ。型番と価格と交換頻度を確認してください。本体が安くても、消耗品で差がつきます。

コード式の掃除機を検討しているなら、吸込仕事率(W)を見る。 そちらは表示義務があり、JIS C9108で測り方が決まっていて、許容範囲も表示値の−10%以内と定められています。ロボット掃除機にはない確かさがあります。

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