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こんな場面で、選び方に迷っていませんか
マットレスを探すと「高反発」「低反発」「高密度30D」「復元率99%」といった言葉が並びます。どれを基準に比べればいいのか分かりません。
結論を先に書きます。
「高反発」「低反発」は、法律に存在しない言葉です。 業界の慣用語で、公的な定義も境界値もありません。
法律が書けと定めているのは「かため/ふつう/やわらかめ」の3区分と、ニュートン値と、復元率です。 この3つは義務表示です。
よく見る「密度(D値)」は、規程に一度も登場しません。 完全な任意表示です。
「高反発」「低反発」は、法律に存在しない言葉です
ウレタンフォーム製のマットレスは、家庭用品品質表示法の対象品目です。根拠は雑貨工業品品質表示規程で、繊維製品ではなく「雑貨工業品」として規制されています。
その規程が硬さの表示に使うよう定めている用語は、次の3つだけです。
| 硬さ | 表示すべき用語 |
|---|---|
| 110ニュートン(11重量kg)以上 | かため |
| 75ニュートン以上110ニュートン未満 | ふつう |
| 75ニュートン未満 | やわらかめ |
規程にも、消費者庁の手引きにも、「高反発」「低反発」という語は一度も出てきません。 法令用語ではなく、上の3区分とも対応関係がありません。
JIS側も同じです。JIS K 6400-3 がボールリバウンド法による反発弾性の測定方法を定めていますが、「何%以上を高反発と呼ぶ」という区分や閾値の規定はありません。測り方はあっても、呼び方の線引きがないということです。
つまり「高反発」と書かれた2つの製品が、同じ性質を持っている保証はありません。
法律が書けと言っているのは、ニュートンと復元率です
規程がウレタンフォームマットレスに義務づけている表示項目は、次の7つに表示者の氏名・住所(または電話番号)を加えたものです。
材料/構造/寸法/硬さ/復元率/外装生地の組成/使用上の注意
このうち比較に使えるのは硬さ(ニュートン)と復元率(%)の2つです。
硬さは JIS K 6400-2 の 6.4 A法(40%定圧縮して30秒後の力を求める方法)で測った数値を、N(重量kg)単位で表示します。かため/ふつう/やわらかめの区分用語に、数値を括弧書きで添える形です。
復元率は JIS K 6400-4 の 6.2.4 で測った圧縮残留ひずみから算出します。
そして「密度」は、規程のどこにも出てきません。 D値(kg/m³)は法令がまったく求めていない任意表示です。市場では「高密度35D」のような訴求をよく見ますが、法的な裏づけがあるのはニュートンのほうです。
「復元率」は、実測より低く書いてよいことになっています
復元率の算出方法について、規程の原文はこうです。
JIS K6400-4(軟質発泡材料-物理特性の求め方-第4部:圧縮残留ひずみ及び繰返し圧縮残留ひずみ)の6・2・4に規定する測定方法により得た数値を、100から差し引いた残りの数値以下の数値(%)で表示する。
「以下の数値」です。 復元率 = 100 −圧縮残留ひずみ で計算した値そのものではなく、それ以下の数字を書いてもよい、という構造になっています。実測97%の製品が「96%」と表示することは、規程に沿った表示です。
なお「復元率」は JIS の試験項目名ではありません。JIS K 6400-4 が定めているのは「圧縮残留ひずみ」で、復元率は規程が表示用に定義した指標です。
比較に使うときは、この数字は控えめに書かれている可能性があること、そしてメーカー間で測定後の丸め方が揃っているとは限らないことを踏まえてください。
厚さ50mm未満には、そもそも表示義務がありません
規程が対象とするのは、こう定義されています。
ウレタンフォームマットレス(ウレタンフォームの部分の最大の厚さが五十ミリメートル以上のものに限る。)
ウレタン部分が50mm未満の製品は対象外です。 薄手のトッパーやマットレスパッドに硬さや復元率の表示がなくても、違反ではありません。
ただし実際の市場を見ると、この線引きは表示の有無にあまり反映されていませんでした。アイリスオーヤマの厚さ4cm(40mm=対象外)は硬さ147N・復元率99%を公表している一方、対象である西川の9cm(90mm)製品の公式ページには復元率の記載がありません。
また、素材が違えばこの規程の対象外です。 エアウィーヴは中材がポリエチレン100%(エアファイバー)、NELLはポケットコイル。どちらもウレタンフォームマットレスではないので、ニュートンでの横並び比較は原理的に成立しません。スプリングマットレスは規程の別品目として扱われます。
品質表示のタグは、どこを見ればいいか
規程が義務づけている7項目は、実際の製品では縫い付けのタグか、外装フィルムの表示として付いています。項目ごとに書き方まで決められています。
材料 ― 「ウレタンフォーム」という用語を使うことになっています。
構造 ― 構造の種類を示す用語で表示します。「単層波形」「積層平板」のような書き方です。1枚のウレタンを波形に加工したものか、複数の層を貼り合わせたものか、という区別です。
寸法 ― 厚さ・幅・長さをmmまたはcmで。cmの場合は小数第1位まで。許容差は JIS K 6401 によります。
硬さ ― 区分用語(かため/ふつう/やわらかめ)に、ニュートン値を括弧書きで添えます。「かため(149N)」のような形が規程に沿った表示です。
復元率 ― %で、単一の数値。「95〜99%」のような幅のある書き方は認められていません。
外装生地の組成 ― 繊維製品の表示に準じて構成比率を書きます。「ポリエステル100%」「ポリエステル65%・綿35%」のような形です。
使用上の注意 ― 「火又は温度の高いものに近づけない旨」が必須です。
これに加えて、表示した事業者の氏名または名称と、住所または電話番号が付きます。
買う前に販売ページで確認できるのは、このうち硬さ・復元率・寸法・組成あたりです。 通販では現物のタグが見えないので、商品ページの仕様欄にこれらが書かれているかどうかが、そのまま判断材料になります。
監督官庁は、マットレスの表示をどう見ているか
表示義務がある以上、守られていない場合はどうなるのか。調べた範囲では、摘発された記録を確認できませんでした。
消費者庁が公表している「令和5年度における家庭用品品質表示法の運用状況」(2024年6月27日公表)を確認したところ、マットレスおよびウレタンフォームマットレスに関する立入検査・指示・公表の事例は記載がありませんでした。 寝具関連で載っているのは、布団の詰物の組成表示に関するQ&Aだけです。
国民生活センターの寝具関連の注意喚起も確認しました。見つかったのは強引な訪問販売に関するもので、「高反発」などの表示や品質表示の不備そのものを問題にした注意喚起は見つかりませんでした。関連して、2023年10月25日公表の商品テスト「中綿の組成が表示と異なっていたコート」という事例はありますが、これは繊維製品の組成表示の話で、マットレスではありません。
マットレスの表示について景品表示法の措置命令が出た事例も、今回の調査範囲では特定できませんでした。
つまり、義務表示ではあるけれども、表示が欠けていることが行政処分につながった例は確認できないという状態です。西川の公式製品ページに復元率の記載がないことも、この文脈の中にあります。買う側としては、取り締まりを当てにするより、自分で表示の有無を確認したほうが早いということになります。
7点の比較
| 製品 | 価格(シングル) | 硬さ(N) | 法定区分用語 | 復元率 | 密度(D値) | ウレタン厚さ | 規程の対象 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| アイリスオーヤマ 高反発マットレス 厚さ8cm | 8,870円(Amazon) | 149N | かため | 99% | 商品名に35D | 8cm | 対象 |
| アイリスオーヤマ 高反発マットレス 厚さ4cm | 5,486円(Amazon) | 147N | かため | 99% | 商品名に35D | 4cm | 対象外(50mm未満) |
| オリジナルコアラマットレス | 69,900円 | 265N | かため | 99.25% | 記載なし | 3層構造 | 対象 |
| 西川 エアー01 マットレス(ハード) | 52,800円(Amazon) | 公式比較表はBASIC 110N | 記載なし(自社語HARD/REGULAR) | 公式に記載なし | 記載なし | 8cm | 対象 |
| 西川 エアーSI-H マットレス | 132,000円 | 185N | 記載なし(HARD) | 公式に記載なし | 記載なし | 9cm | 対象 |
| ニトリ 高反発マットレス 厚さ10cm | — | 170N | 記載なし(数値のみ) | 95% | 記載なし | 10cm | 対象 |
| エアウィーヴ スマート Z01 | 77,000円 | — | — | — | — | — | 対象外(ポリエチレン) |
| NELL マットレス | 67,915円 | — | — | — | — | — | 対象外(ポケットコイル) |
価格は確認時点のものです。ニトリの価格は公式サイトがJavaScript描画のため取得できませんでした。
調べて分かったこと
ニュートンは定着しているのに、同じく義務の復元率は抜け落ちています。 ウレタン系4ブランド(西川・コアラ・アイリスオーヤマ・ニトリ)のうち、硬さを公表していたのは4社すべて。復元率を公表していたのは3社で、西川だけが公式製品ページに記載していませんでした。 価格帯が最も高いブランドで欠けている形です。
法定の区分用語を併記していたのは4社中2社でした。 コアラとアイリスオーヤマのみ。西川は「REGULAR/HARD」という自社の言葉、ニトリは数値だけです。
密度(D値)は、調べた6ブランドすべての公式製品ページに記載がありませんでした。 ところがアイリスオーヤマのAmazonの商品名には「高密度ウレタン35D」と入っています。同じ製品でも、売り場によって出している数字が違います。 「D値で選ぶ」という比較軸は、メーカー公式には存在しないことになります。
製品別に見る
アイリスオーヤマ 高反発マットレス 厚さ8cm(MAKK8-S)
硬さ149N、法定区分は「かため」、復元率99%。一枚もの波形構造、側生地ポリエステル100%、リバーシブルカバー。今回調べた中で、法定の表示項目を数値と区分用語の両方できちんと出していた製品です。 厚さ8cmで規程の対象、表示も対象どおり。
アイリスオーヤマ 高反発マットレス 厚さ4cm(MAKK4-S)
硬さ147N「かため」、復元率99%。8cmとほぼ同じ硬さで、厚みだけが違います。ウレタン部分が40mmなので規程の対象外ですが、それでも硬さと復元率の両方を公表しています。 表示義務がない製品に表示がある例です。既存の敷布団やベッドに重ねて使う前提の厚みです。
オリジナルコアラマットレス
硬さ265N、法定区分「かため」、復元率99.25%。3層平型で、上層にクラウドセルを使う構成。今回の7点で硬さの数値が最も大きい製品です。 製品ページでは「高反発×低反発」という表現を使っていますが、法定の区分用語(かため)も併記されています。公式直販で、Amazon・楽天での取り扱いは確認していません。
西川 エアー01 マットレス/エアーSI-H マットレス
西川の公式比較表には全モデルのニュートン値が一覧化されています。エアー01 BASIC マットレス(シングル)は110N・8cm・49,500円、エアーSI REGULAR は160N・9cm・132,000円、エアーSI-H は185N・9cm・132,000円。ニュートンは明示されていますが、復元率は公式の製品ページにも比較表にも記載がありませんでした。 3ページを確認した結果です。寸法・硬さ・外装生地の組成は載っているのに、復元率の欄だけがない状態です。
区分用語も「REGULAR」「HARD」という自社の言葉で、法定の「かため/ふつう/やわらかめ」は使われていません。
なおAmazonで売られているのは「エアー01 マットレス シングル ハード」(52,800円)で、公式比較表のBASIC(110N)とは硬さ違いの別仕様です。同じ「エアー01」でも硬さが違うので、型番で確認してください。
ニトリ 高反発マットレス 厚さ10cm(日本製)
硬さ170N、復元率95%。ウレタンフォーム約4.6kg。硬さと復元率の両方を数値で出していますが、法定の区分用語は併記されていません。 170Nは110N以上なので、区分でいえば「かため」にあたります。
ニトリには低反発トッパー(ソフティNF S、厚さ2.5cm)もあり、こちらは48.1Nと表示されています。2.5cm=25mmで規程の対象外ですが、硬さだけは出しています。
エアウィーヴ スマート Z01
中材はポリエチレン100%のエアファイバー、厚さ9cm、77,000円。ウレタンフォームではないので、雑貨工業品品質表示規程のウレタンフォームマットレスには該当しません。 硬さのニュートン表示も復元率もありません。製品ページは「高反発」ではなく「適度な反発力」という表現を使っています。
ニュートンで比べたい場合、この製品は比較の土俵に乗らない、と理解しておくのが正確です。
NELL マットレス
ポケットコイル1,734個(ダブル)、13層構造、67,915円(通常79,900円)。コイル製なのでウレタンフォームマットレスではありません。 こちらも「高反発」という語は使わず「適度な反発力」としています。
「◯年保証」は横並びで比べられません
マットレスの「10年保証」などは、へたりの判定基準が各社でばらばらで、単位すら揃っていません。
| ブランド | 保証年数 | へたりの判定基準 |
|---|---|---|
| 西川 | ウレタン3年/ベッドマットレス10年 | 周囲の厚みに対して厚み変化5%以上(比率) |
| テンピュール | マットレス10年(一部15年) | 2cmを超える明瞭な凹み(絶対値)。素材・製造起因の欠陥に限る |
| NELL(Model H) | ボトムマットレス10年 | 4cm以上のヘタリ(絶対値) |
| エアウィーヴ | ベッドマットレス・トッパー・敷き布団3年 | 「当社の規定以上に変形」。具体的数値は非公開 |
| ニトリ | スプリング部分30年/その他5年 | ウレタンのへたり基準の記載なし。30年保証はスプリングの故障・不具合に適用 |
| フランスベッド | 2年(一部1年) | 記載を確認できず |
| シモンズ | マットレス2年 | 記載を確認できず |
基準が「比率」「絶対値」「非公開」「そもそも規定なし」の4通りに分かれています。5%と2cmと4cmは、そのままでは比較できません。
そして、測定条件(無荷重で測るのか荷重をかけるのか、どの部位を測るのか、何日放置してから測るのか)を明記していたメーカーは、確認した8社の中に1社もありませんでした。
ニトリの「30年保証」はスプリングの故障・不具合に対するもので、ウレタン部分のへたりは対象外です。保証年数の長さが、へたりを保証することを意味しない例です。
比べられないものを、無理に比べない
今回調べて分かったのは、マットレスは「全製品を1つの表に並べる」ことが構造的にできないということです。
素材が違えば指標が存在しません。 ニュートンはウレタンフォームの硬さを測る数値です。エアファイバー(ポリエチレン)やポケットコイルには、この規程にもとづく表示義務がありません。「N値が書いていない」のは、隠しているのではなく、制度上書く対象ではないからです。
同じニュートンでも寝心地が同じとは限りません。 規程が定めているのは JIS K 6400-2 の A法で測った1つの数値だけです。層構造(単層波形か積層平板か)、各層の厚みの配分、表面の加工は、この数値に現れません。149Nの一枚もの波形と、149Nの3層構造は、同じ数字でも体感が違います。
復元率は「へたりにくさ」の全部ではありません。 圧縮残留ひずみから算出する1つの試験値です。実際のへたりは、体重、使用年数、湿気、寝返りの回数、裏返して使うかどうかで変わります。復元率99%と95%の差が、何年後に何cmの差になるかを示す指標ではありません。
価格差の理由は、表示項目には現れません。 今回の7点は5,486円から132,000円まで24倍の開きがありますが、法定表示の充実度で見ると、最も安いアイリスオーヤマが最もそろっていました。価格差は、生地の質、層構造の設計、製造国、保証の手厚さ、店舗での試し寝のしやすさといった、表示項目の外側にあります。
数値で比べられるのは、ニュートンと復元率だけです。 そこから先は、試し寝するか、返品できる条件で買って自分で確かめるしかありません。
条件から選ぶ
法定の表示項目がそろっているものを選びたい。 硬さ(ニュートン)・法定区分用語・復元率の3つをすべて公表していたのは、今回の範囲ではアイリスオーヤマとコアラです。
硬さの数値で比べたい。 ニュートン値が公表されているのは、アイリスオーヤマ147N・149N、ニトリ170N、西川110〜220N(モデルによる)、コアラ265N。エアウィーヴとNELLは素材が違うため数値がありません。
既存の布団やベッドに重ねたい。 ウレタン部分が50mm未満の製品は規程の対象外で、表示がなくても違反ではありません。アイリスオーヤマの4cmは対象外ながら147N・復元率99%を出しています。
予算を抑えたい。 今回の7点では、アイリスオーヤマの4cmが5,486円、8cmが8,870円。他は52,800円〜132,000円でした。価格帯と、法定表示の充実度は比例していませんでした。
「D値」で選ぼうとしている。 その指標は法令が求めていない任意表示で、今回調べた6ブランドの公式製品ページにはどこにも載っていませんでした。比較軸として使うのは難しいと考えてください。
買う前に、最初にやること
「高反発」という言葉ではなく、ニュートンの数値を見る。 法律に定義がある言葉ではありません。110N以上が「かため」、75N以上110N未満が「ふつう」、75N未満が「やわらかめ」です。
復元率の表示があるか確認する。 義務表示なのに、公式ページに出していないメーカーがありました。無い場合は、その数字を使った比較ができません。
復元率の数字を額面どおりに受け取らない。 規程は「100から差し引いた残りの数値以下の数値」と定めています。実測より控えめに書かれている可能性があります。
ウレタン部分の厚さが50mm以上かを見る。 50mm未満なら表示義務がないので、表示がないこと自体は問題になりません。比較の前提が変わります。
ウレタン以外の素材は、別の土俵だと理解する。 エアファイバー(ポリエチレン)やポケットコイルは規程の対象外で、ニュートン表示がありません。「数値が無い=情報を隠している」ではありません。
保証は年数ではなく判定基準を読む。 「何cm沈んだら対象か」「比率か絶対値か」「そもそもウレタンのへたりが対象か」。年数が長くても、ウレタンのへたりが対象外のことがあります。
同じ製品名でも硬さ違いがあることを前提に、型番で確認する。 西川のエアー01のように、同じシリーズ名でレギュラーとハードが流通しています。販売ページの型番とニュートン値を突き合わせてください。

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